アカデミー賞監督賞のメキシコ人による受賞は、昨年「ゼロ・グラヴィティ」でメガホンを取ったアルフォンソ・キュアロン監督(53)が初めて。昨年は作品賞も、米国の黒人奴隷制度が題材の「それでも夜は明ける」が黒人監督作品として初受賞を果たし、「白人優位の男社会」と揶揄(やゆ)されてきたハリウッドの大転換を印象付ける一大イベントになった。
話題作に配慮にじむ
背景には、2013年7月にアカデミー各賞を投票で決める映画芸術科学アカデミー(AMPAS)の会長に黒人女性のシェリル・ブーン・アイザックスさんが就任したことがある。アイザックスさんは黒人初の会長として、賞に人種や価値観の多様性を反映させるため、白人以外の若手新会員を積極的に増やしたとされる。
ただ、昨年の受賞結果はさすがに性急過ぎたと判断したようで、その反動か、今年は人種問題や政治色のある作品を逆に避ける傾向が強まった。
クリント・イーストウッド監督(84)の「アメリカン・スナイパー」も前評判は高かったが、映画のテーマはイラク戦争。米国内で左右両派の論争を招くなどした“政治性”が嫌われ、結局作品賞の受賞を逃している。