【本の話をしよう】
多くの人が経験した、あるいはこれからするであろう就職活動。“選ばれる”側については、これまで多くの作品の中で焦点が当てられてきた。しかし、“選ぶ”側にもまた、ドラマがある。気鋭作家・朝比奈あすかさん(38)の新刊『あの子が欲しい』は、新人採用プロジェクトのリーダーに任命されたアラフォー女性を主人公に、就職戦線の舞台裏を、時代の空気を映しながら活写した。
この時代を鋭く突く
《今のわたし、いかにもスマホ中毒者みたいじゃなかったか。川俣志帆子は一瞬恥じ入るが、カフェの中にいるのは手の中の機器に視線をめりこませている客ばかりで、誰も他人のことなど見ていなかった。》
はっとさせられる描写で始まる本作。「就活の舞台裏」というテーマ性もさることながら、情報の海の中に生きなければならない「2015年」を鋭く突く視点に引きこまれる。
「同時代性への関心はすごく高いかもしれません。電車に乗っていても、スマホに夢中で周りの人の顔を覚えていないことに気づき、私自身はっとする。まるでガラスのカプセルの中にいるように」