イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」がヨルダン軍パイロット、モアズ・カサスベ中尉(26)を殺害したとする映像を公開したことを受け、ヨルダン空軍はイスラム国に対する空爆を再開した。一方、米高官はカサスベ中尉の拘束後、アラブ首長国連邦(UAE)が空爆への参加を中断したと述べており、米国が主導する有志連合の足並みが乱れているもようだ。
「英雄であるカサスベ中尉が流した血を無駄にしない」
ヨルダンのアブドラ国王(53)は、中尉を殺害したとする映像公開を受け、訪米日程を切り上げて4日に帰国。すぐに国軍幹部を集めてこう指示し、イスラム国に対する武力攻撃を協議した。国営ペトラ通信が伝えた。
ヨルダン政府幹部は、ヨルダン空軍が米国と協力の上、イスラム国が“首都”と称するシリア北部ラッカで報復の空爆を開始したことを地元メディアに明らかにした。ラッカ周辺はカサスベ中尉が空爆したと伝えられる地域。空軍は昨年12月の中尉拘束後に空爆を中断していた。
国王は「ヨルダンの息子である中尉がテロリストの虐殺を受けたことは、イスラムの本来的な価値観に対する挑戦でもある」と述べ、イスラム国との戦闘は「無慈悲なものになるだろう」と、壊滅する方針も示したという。立憲君主制のヨルダンでは、最高権力者の国王が軍の統帥権を握る。