【アートクルーズ】
訪れた場所で出合った物に少しだけ手を加え、ユーモアや詩情があふれる景色をつくり出すガブリエル・オロスコ(1962年~)。俳句を詠むような創作の軽妙さ、鋭敏さが、国籍を超え、評価を高めている。日本で初めての大型個展がいま、東京都現代美術館(東京都江東区三好)で開かれ、話題を集めている。
「島の中の島」は、ニューヨークのマンハッタンのビル街を背景に、誰も見向きもしない木片や石のゴミを使って、新たな“摩天楼”を築いた。一見、子供たちが作った模型のようでもあり、どこかメルヘンチックな風景にも見えるが、深読みをすれば、マンハッタンのビル街こそが地球上の巨大なゴミにも思えてくる。
「猫とスイカ」はもっと楽しい。キャットフードの缶詰だろうか。しま模様のスイカの上に並べられただけで、缶詰とスイカは一体化してカワイイ猫の群に見えてくる。色合いの美しさも印象的な作品だ。
オロスコは、簡易なカメラ以外に何も持たずに旅に出る。現地で出合った風景と、手に入れたささやかなものを材料に、少しだけ手を加え、魔法のように新しい風景(アッサンブラージュ)を作り出す。そして写真に納める。