大抵の違和感は、しばらくすると忘れてしまうことがほとんどだけれど、中には粘り強く一週間経(た)っても一カ月経っても消えないどころか、ますます心の中でわだかまっている場合がある。私はそれを「わだかり様」と呼んでいる。
話題の井戸も尽き
こないだ知り合いと食事をしたときにも「わだかり様」をあやかった。
デザートが運ばれて来る頃、彼女が突然「今から他の友達をここに呼びたい」と言い出したのだ。私とは面識のない相手だけれど、近くまで来ているという。やがて、私たちのテーブルに割り込むように座り込んだ相手と合流したものの、驚くほど話がかみあわない。そのことに相手も気づいたらしく、私たちはお互いに必死で共通の話題を弄(まさぐ)ったが、せっかく掘り当てた井戸もすぐに水が枯れてしまう。収束していくその場をどうすることもできないまま、ただただこの場が終わることを願っていると、突然一人がお店の人に頼んで「写真を撮ってもらおう」と言い出した。