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【溝への落とし物】「わだかり様」の話 本谷有希子 (1/4ページ)

2015.1.26 15:45

生まれて初めて彫った、未(ひつじ)年の芋判(本谷有希子さん撮影)

生まれて初めて彫った、未(ひつじ)年の芋判(本谷有希子さん撮影)【拡大】

  • 劇作家、小説家、演出家、本谷有希子さん(本人提供)

 大抵の違和感は、しばらくすると忘れてしまうことがほとんどだけれど、中には粘り強く一週間経(た)っても一カ月経っても消えないどころか、ますます心の中でわだかまっている場合がある。私はそれを「わだかり様」と呼んでいる。

 話題の井戸も尽き

 こないだ知り合いと食事をしたときにも「わだかり様」をあやかった。

 デザートが運ばれて来る頃、彼女が突然「今から他の友達をここに呼びたい」と言い出したのだ。私とは面識のない相手だけれど、近くまで来ているという。やがて、私たちのテーブルに割り込むように座り込んだ相手と合流したものの、驚くほど話がかみあわない。そのことに相手も気づいたらしく、私たちはお互いに必死で共通の話題を弄(まさぐ)ったが、せっかく掘り当てた井戸もすぐに水が枯れてしまう。収束していくその場をどうすることもできないまま、ただただこの場が終わることを願っていると、突然一人がお店の人に頼んで「写真を撮ってもらおう」と言い出した。

写真が吐く嘘

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