拉致被害者らを再調査する北朝鮮の特別調査委員会が7月上旬に設置されてから4カ月が経過した。この間、北朝鮮は「夏の終わりから秋の初め」で合意していた初回報告を先送りした。さらにマスコミを通じた水面下のプロパガンダ(宣伝)工作で拉致被害者の帰国が難しいことを指摘したり安倍晋三首相の学歴を揶揄(やゆ)したりとやりたい放題だ。政府内にも秘密交渉に徹する外務省の独走で不協和音が生じつつあり、一丸となって北朝鮮に挑む体勢作りが急務となっている。
官邸は怒り爆発
外務省は先月末の政府代表団の平壌派遣にあたり、綿密な事前打ち合わせを実施。政府関係者によると、調査委員長の徐大河(ソデハ)国家安全保衛部副部長を名乗った偽者が出てきた際の対応も協議された。政府は事前に徐氏の顔など個人情報を把握していたが、北朝鮮が日本政府の力量を試すことを危惧していたのだ。
「日本人全ての問題を解決したい」
腹の底から出る徐氏の野太い声が部屋に響き渡った。本物だった。不安は杞憂(きゆう)に終わったが「全てを疑う」(日朝関係者)ことから平壌派遣の事前準備が始まったという。