【安倍政権考】
集団的自衛権の限定的な行使容認を柱とする7月1日の閣議決定をめぐって、奇妙な現象が起きている。災害派遣を除き自衛隊が果たしてきた役割に批判的だったり、自衛隊を尊重したことがほとんどなかったりした人々や勢力が「自衛官の命」をにわかに心配するようになったのだ。彼らの大部分は左翼・リベラル派である。
14、15の両日に国会で開かれた集中審議もそうだった。集団的自衛権の行使容認に反対する議員たちが相次いで、安倍晋三首相(59)に、自衛官が亡くなるリスクを認めるよう迫った。
社民党は集団的自衛権反対を訴える党のポスターに「あの日から、パパは帰ってこなかった」と、大きく記した。
「おためごかし」という言葉は彼らの議論を表すのにピッタリだ。集団的自衛権の行使容認に反対する手段として使っているだけではないのか。首相にリスクを語らせ、反対の大宣伝に利用する底意があるとしたら、品性に欠ける振る舞いでもある。