間もなく1学期が終わり、夏休みになる。この時期、映画だけでなく舞台でも、小・中学生の観客を前提にし、大人でも楽しめる作品がいくつか上演される。
匂いや音にも工夫
KAAT神奈川芸術劇場(横浜市)が2012年に制作、今夏は7月18日のKAATを皮切りに全国8カ所で上演する「暗いところからやってくる」は、脚本が劇団「イキウメ」主宰の前川知大、演出は小川絵梨子と、今最も人気の高い2人が手がける。再演では人物像をより深め、前回も試みた匂いや音による演出をより工夫して「五感で“みる”」芝居に仕立てる。
祖母が亡くなり、古くて薄暗いその家に住むことになった中学生・輝夫(大窪人衛)を主役に、2学期が始まる直前、夏休みの3日間を描く。観客席は輝夫の部屋の舞台セットを囲むようにしつらえ、観客はまるで部屋の片隅で、輝夫の身に起こる不思議なことを体験するように見る。前回上演では「向き合う客席から子供たちのリアクションが作品の一部として目に入った」(前川)、「笑ったり怖がったりする素直な感情表現に、大人もつられるようにお芝居の世界に引き込まれていく。子供たちの存在が作品を完成させた」(小川)といい、虚構が現実と地続きになる演劇ならではの醍醐味が味わえたようだ。