アルゼンチン国民の期待を一身に背負ったリオネル・メッシ(27)は、1986年メキシコ大会で母国を世界一に導いた英雄ディエゴ・マラドーナにはなれなかった。試合後、選出された最優秀選手(MVP)のトロフィーを受け取る際も顔面は蒼白(そうはく)のまま。「優勝トロフィーの方が良かった」と寂しそうにつぶやいた。
「運がなかった」
決勝で放ったシュートは両チーム最多の4本。後半2分、後ろからのパスを巧みにトラップし得意の左足を振り抜いたが、わずかに右へ。1点を奪われた後の延長後半13分には左クロスに猛然と走り込み、珍しくヘディングで狙った。
終了間際に自ら倒されて得た好位置のフリーキックは、力んでゴールを大きく越えた。何度もあったチャンスを決められず、「運がなかった」と嘆いた。
守備でボールを追わず、大半の時間はピッチをトボトボと歩いていた。批判の声もあるが、いざボールを持つとスイッチが入り、鋭いドリブルで敵陣を切り裂いた。1次リーグでは3試合連続の計4ゴールを挙げ、個人技でチームを決勝トーナメントに導いた。
「メッシは砂漠のオアシス」と言ってはばからないサベラ監督。主将でエースの「10番」と“心中”する戦術で決勝の舞台までたどり着き、「ここまで勝ち進む原動力になった」とかばった。