キュートでポップな画風が人気のアーティスト、塗敦子(ぬり・あつこ)さん。彼女が活動する宮城県仙台市の通所型福祉施設「こぶし」は、東日本大震災で被害を受け、2013年に再建された。ようやく日常を取り戻した彼女の作品展示販売会が、東京都港区のレストラン「元麻布東郷」で開催されている。
出会いは2011年夏
塗さんの作品と出会ったのは2011年。東日本大震災のあった年の夏だった。
その年の3月末に、私は障がいのある人のアートチャリティー展『よりそう』を立ち上げ、東京や広島など、そして被災地では福島のいわき、宮城の石巻、仙台で開催した。
仙台のデパートで展示準備中、ある美術家に声をかけられたのだ。「地元、仙台にも素晴らしい絵を描く女性がいますよ」と。
聞けば、塗さんは知的障がいのある人の自立を目的にした社会福祉法人「仙台市手をつなぐ育成会」が運営する「こぶし」に通いアート活動をしていたが、震災で施設は全壊。彼女の作品を収めていた段ボールも棚から飛び出した物品の山に埋もれてしまっていた。