そして、「こんな治安の悪い所でどうやってこの子は自分を守るんだ」と心を痛める。
その時、一緒にいた友人の「仕方がない」という言葉に彼は強い戸惑いを覚えた。暴力が横行する中、見て見ぬふりをする大人たち。誰も守ってくれないという絶望感にさいなまれた自分の子供時代を思い出したからだ。
「子供を守れない大人にだけはなりたくない」「彼らが安心できる環境をつくりたい」。この出会いが「Enije」発足のきっかけとなる。
思いは強かったが資金がなかったため、「できることからやる」と決めた彼はまずノートを100冊ほど持ち、ガーナに出かけた。日本で育った彼は「ノートなんかでは喜んでもらえないだろう」と思っていたという。けれども彼の予想は裏切られる。子供たちは一冊のノートに大喜び。涙する子もいた。子供たちの素直な反応に感動し、彼も思わず泣いてしまったという。「可能な限り活動を続けていこうと思った」