「エンディングノート」は、高度経済成長を駆け抜けたサラリーマンの父親を、娘である砂田監督が追った作品。公開当時はテレビをはじめ多くのメディアで紹介され日本のドキュメンタリーとしては異例の大ヒット、1億円を超える興行収入を記録した。「段取り命!」の父がある日突然がんを宣告される。エンディングノートを遺(のこ)す父と家族に訪れる最後の日々を娘がカメラで追う。
「ディア・ピョンヤン」は、韓国・済州島出身でありながら思想的に北朝鮮を「祖国」として選び、朝鮮総連の幹部として生きた父親が主人公。大阪で暮らす両親とピョンヤンで暮らす兄たちを、娘であり妹である監督=私が10年間カメラで追った作品。本作の発表後、私は「北朝鮮入国禁止」を言い渡された。家族に会えなくとも映画を作り続ける決心を固めるキッカケにもなった作品である。
何語る? 今からドキドキ
自身の家族にカメラを向け、「素」の表情や言葉を切り取り、その映像を世間にさらすという暴力的な行為を行った私たち。娘としての躊躇(ちゅうちょ)を乗り越え、制作者として家族の心の中をのぞき込もうと葛藤した時間を振り返りながら、何を語るのだろうかと私自身、今からドキドキしている。