その後も彼女は市井の人々を描いた映画を配給し続けている。タンゴも恋愛も出てこないアルゼンチン映画『今夜、列車は走る』では失業した鉄道員たちと家族が描かれ、サッカーもカーニバルも出てこないブラジル映画『聖者の午後』はニートの30代が主役だ。
もう一度見たくなる
「ステレオタイプの映画には興味がない。光が当たらない人たちに興味があるから」と比嘉さんは語る。そして、「映画を配給するのは、日本に住んでいると私が生きづらくてしかたないから。だけど、神戸に両親もいるし、まだ日本を離れられない。アハハハー」と笑う。比嘉さんから「生きづらい」という言葉が出てきたのは意外だった。これまでケニアやキューバ、メキシコなど色んなところで生活経験がある。「好きなことしかしない」ときっぱり言う彼女でさえ、今の日本は自分らしく自由に生きていけない場所なのだ。