【本の話をしよう】
累計15万部のヒットとなった『うさぎパン』など、若者のかわいらしい恋の描写に定評のある作家、瀧羽(たきわ)麻子さん(32)。新刊『いろは匂へど』では、京都を舞台に、これまでよりちょっと大人な恋物語を紡ぎだした。
一人でも生きていけると思っていた。なのに-。京都で小さな和食器店を営む30代半ばの独身女性、紫(ゆかり)。ある日、パーティーで不思議な魅力を持つ50歳の草木染め職人・光山(こうざん)と出会う。その大胆で無邪気な魅力に、紫は徐々にひかれていく-。
『うさぎパン』では高校生、『左京区七夕通東入ル』は京都の大学生の恋愛を。しかし、今回主人公に選んだのは恋に一線を置く30代半ばの大人の女性だ。「私自身も徐々に大人になってきたし、周りにも30代の独身女性ってすごく多い。大人になると、若いときほど簡単に恋に落ちづらくなる。今回の作品の登場人物はほぼ全員大人ですが、こういう状況に置かれたとき、どういうふうに動くか、もしくはこういうふうに動きたいのに、動けないのかを考えてみたかった」