ロックも自分の音楽の肥やしに
世界各国のオーケストラはそれぞれお国柄があるという。「ドイツのオーケストラはプライドを持っており、フランスはスタンダードが高い。アメリカのオーケストラも自信を持って弾きます。国の力があり、それを信じているからです。音楽にもそういう態度が出ます。私は今、ニューヨークに住んでいますが、ホームベースはアメリカではなく、やはり日本。帰ってきたという気がします」
ただ演奏と日本人であることとは関係ない、自分は日本人的な演奏とは思わない、と話す。過去の巨匠たちの録音を聴き、ロックさえも自分の音楽の肥やしにする。CDに収録したプロコフィエフのバイオリン・ソナタ第1番の3楽章でテーマが戻ってくる部分は、古いレコードをかける蓄音機のざらざらした音をイメージし、バイオリンとピアノの音とのギャップ、コントラストを作ることを目指した。
「クラシックは博物館に行ってカタログを作ることではありません。現代に通じる生き生きとしたものでないといけない。だからいろんなところからアイデアをもらいます。弓を変え、弓の持ち方を変え、ガット弦を使ってみたり、弾き方を変えたり、いろいろ試します。あえて変な指使いをすることもあります。