東日本大震災の津波で被災した岩手県の三陸鉄道は4月5日、南リアス線(盛(さかり)-釜石、36.6キロ)全線の運行を再開した。NHK連続テレビ小説「あまちゃん」の「北三陸鉄道」のモデルにもなった復興の象徴。津波にのまれ、茶色の更地が広がる海沿いを朝日を浴びて一番列車が走った。沿線には開通を祝う大漁旗がはためき、運転士は感謝の思いを込めて、笑顔の乗客を運んだ。
「支援のおかげでここまで来られました。楽しんでください」。午前6時ごろ、釜石駅での上り一番列車の出発前、運転士、佐々木光一さん(42)は車内で深々と一礼。白、赤、青に塗り分けられた1両編成の列車が動きだすと、乗客約30人から拍手が湧いた。
三陸鉄道は震災からわずか5日後の2011年3月16日に一部で運行を始め、復興の象徴になった。「あまちゃん」効果で、全国から観光客が訪れるようにもなった。線路や橋が津波で寸断、当初は再建が厳しいとみられたが、90億円を超えた復旧費用の大半を国が負担。運行区間を段階的に増やしてきた。
この日は、南リアス線で最後まで不通になっていた吉浜-釜石間の15キロが復旧。6日には北リアス線(宮古-久慈、71キロ)の不通区間が解消し、震災から3年余りで全面的に復旧。地域の足としての存在感を取り戻し、観光客の呼び込みや産業の復興を支える。