【美のカリスマ IKKOのちょっといい話 聞きたい?】
今年も桜の季節がやってきました。何度も引っ越しを繰り返してきた私ですが、思えばいつも桜が咲き乱れる場所に住んできました。私にとって桜は大切な木だからです。なぜそれほどまでに、桜は私を引きつけるのでしょう。それは、桜がさまざまな人生を背負っているからかもしれません。
けなげ、たくましい
若い頃、私は桜を「かわいそう」だと思っていました。春になると花を咲かせ、みんな、周りで花見をしたりとちやほやされる。でも、きれいなのはたった1週間だけ。散り始めると人は見向きもしない。散ってしまった花びらだけが折り重なり、朽ちていきます。葉が茂ってくれば、毛虫だらけに。「刺されると危ないから」と、人はみな桜の下を避けるようになります。秋になって葉を落とすと、冬は真っ裸で耐えぬかなければならない…。そんなけなげな姿に、「桜がつらいときに、誰が桜のことを思っているんだろう。みんな、花の時期にはあれだけワイワイ集まってきてくれたのに…」と、切ない気持ちになったものです。
でも、年を重ねてきて、桜に対する見方が変わってきました。きっかけは、知人からこんなエピソードを聞いたこと。花が咲く直前、つぼみの時期の桜の木を使って布を染めると、それはそれは美しい色に仕上がるというのです。私はそれを聞いて、ゾクリとするものを覚えました。