【本の話をしよう】
一社員が、いきなり“ゆるキャラ”に-。製菓会社を舞台に、社員たちの悲喜こもごもを描いた『おい!山田』が刊行された。著者の安藤祐介さん(36)は、自身も公務員として働きながら執筆活動を続ける。「勤め人賛歌にしたい」との思いを込めて、“誰かと仕事をする喜び”を書き上げた。
どんな人にも悩みはある
準大手の製菓会社に勤める山田助(たすく)は、サラリーマン姿のまま、ゆるキャラとなり、新製品「ガリチョコバー」のPRをすることになる。同僚の水嶋里美がマネジメントを引き受けるが、前代未聞のゆるキャラ作戦には社内外から賛否両論が相次ぐ-。
一社員がそのままゆるキャラになるという斬新なアイデア。「人間は誰しもキャラクターを演じているのでは、という思いがきっかけです」と話す。しかし、アイデア倒れには終わらせない。組織の中で働く苦しみや理不尽さ、そしてその先に待ち受ける喜びを丹念に描く。「今、どちらかというと組織に属して働くということが、マイナスにとらえられている。僕自身も組織に属する『勤め人』の一人ですが、組織で働くからこそ得られる喜びがあると思うんです。例えば、足りないものを補いあったりと、自分一人ではできないことができる」