とはいえ、よい面ばかりではない。「メンツを重視しすぎたり、セクショナリズムに陥ってしまったり、部署同士でいがみあったり…力のベクトルをプラスに向かわせることができたら、2倍も3倍も組織のよさを生かせるんじゃないか、とも思います」
穏やかで不思議と人に愛される山田に対し、がんばり屋で負けず嫌いでともすると人と衝突しがちの里美。物語は、そんな山田と里美の交互の視点から進められていく。「外から見たら『いい人』でも、実は心の中でもやもやしたものを抱えている。どんなスーパーマンでも悩みがある。そう思えば、ちょっとラクになれませんか?」
そこでしか見えない所
IT企業などさまざまな組織で働きながら、コンスタントに働く人をテーマにした作品を発表し続けてきた。「勤めて、書いて、勤めて、書いて…の繰り返し。でも、そこでしか見えない所があるんです。自分の作品は『お仕事小説』ではなく、『働く人小説』だと思っています。仕事の特殊性ではなく、働く人そのものが誰と出会い、何を見つけていくのか。そういうものを書いていきたい」