何をやってもだめな、ぐずで、のろまないじめられっ子だ。あがり症のため、人前では自分の気持ちもうまく伝えられない。不惑を過ぎた元携帯電話ショップのアルバイト店員、英国のポール・ポッツ(43)は、ついこの間まで、人気漫画「ドラえもん」に登場するのび太を地でいく、実にうだつのあがらない男だった。だが、のび太にも拳銃の早撃ち、あやとり、3秒で昼寝-といった常人にはとても真似できない特技があるように、ポッツにも歌唱力という、ずぬけた才能があった。
映画になって不思議
周囲の後押しもあり、ポッツは2007年、英国の人気オーディション番組「ブリテンズ・ゴット・タレント」に出演。本番では、普段のあがり症が嘘のように「誰も寝てはならぬ」を朗々と歌い上げてみせた。その圧倒的な歌唱力は、ステージに姿を現したポッツを見て客が漏らしていた失笑をたちまちはね飛ばし、こうるさい審査員たちの度肝を抜き、ポッツは優勝を手にしたばかりか、一躍世界的なオペラ歌手となった。