今回の事件で被害に遭った著作は「ホロコーストを次世代に伝える」「アウシュヴィッツ博物館案内」の2作品。それぞれ、推定110万人以上のユダヤ人らが殺害されたアウシュビッツ強制収容所の内部や歴史の説明、ガイドとして活動する自身の思いなどをつづっている。
「私の本には生還者の談話も多数掲載されている。破損事件が、その人たちに向けられた暴力ならば恥ずかしい」。東京都などによると、2作品は練馬区や東久留米市の図書館で破られているのが確認された。
中谷さんは昨年末、国内外から約430人が参加した被爆地・広島での国際シンポジウムで講演し、歴史継承の大切さについて説いたばかりだった。それだけに、日本にもユダヤ人への偏見が存在することを示すような形となった今回の事件に、憤りが募る。
「国の違いを問わず、人種的な偏見や差別は決して許されないが、これまでなくならなかったことも事実。(社会は)今回の行為を人ごととしてはならない」。中谷さんは語気を強めた。