毎週土曜日に放送中のニッポン放送「徳光和夫とくモリ!歌謡サタデー」に萩本欽一さんがゲスト出演したとき、徳光さんのトークの導入は「萩本さんのことを欽ちゃんとお呼びしてもよろしいでしょうか」でした。欽ちゃんと付き合いの長い徳光さんですら恐縮するお笑いレジェンド萩本さんに対し、僕の呼びかけはいつもなれなれしく「欽ちゃん」です。これには説明が必要で、僕が欽ちゃん劇団の1期生として過ごしていた大学生の頃、「お前らは欽ちゃんと呼びなさい」と欽ちゃんに言われましたから、ずっと「欽ちゃん」なのです。
欽ちゃんは1年間ほぼ毎日稽古場にいらして、「ド素人」もいいとこの僕ら劇団員にいろんなことを教えてくださいました。学芸会レベルの僕には「演じてる奴が笑うな」「面白くしようと思うな」と何度もおっしゃいました。また「テレビに出たいなんて考えを持つな」とも。欽ちゃんは軽演劇の笑いを若い世代に残そうと真剣だったのです。
やがて大学との両立に悩み劇団をやめた僕が、アナウンサーとしてニッポン放送に入り、自分の番組に何度もゲストで来てもらって、ついには欽ちゃんの軽演劇最後の舞台のお知らせをできるなんて、何とも不思議な気がしています。