当時の上原投手の優れた点をひと言でいえば、腕の振りがコンパクトで、球に縦の角度があることだった。このため、スピードガンで表示される球速以上に打者の体感速度は速く、振り遅れが目立った。加えて、縦に鋭く沈み込むフォークボールもコントロール抜群。日米球団のスカウトたちが獲得に血道を上げた実力を証明してみせた。
限界に見えた時期
巨人逆指名の後、実は関係者に「撤回できないのか」と漏らしたと聞く。夢の封印は一時的なものでしかなく、巨人入団後もメジャーへの思いは断ち切れていなかったのだろう。日米野球やワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で本場の野球に触れ、巨人時代にもメジャー挑戦を直訴していたのは印象的だった。
ただ、巨人はポスティングシステム(入札制度)での移籍を認めず、海外フリーエージェント(FA)権を行使できるまで10年待つことになった。
上原投手はこの間、次第に股関節や膝といった下半身の故障が目立つようになった。巨人時代の最後の2、3年は直球の切れも確実に落ちていた。
そんな中で、2009年にメジャーへ移籍した。大学時代から注目していた私にとっては、上原選手の衰えが余計に目についてしまったのかもしれない。ダイヤモンドバックスから移ったブレーブスのスカウトとして獲得調査をしたものの、「是が非でも契約したいレベル選手ではない」という評価だった。