【世界川物語】
「この30年で川はすっかり変わってしまった。一日に取れる魚の量は昔の10分の1にもならない」-。集会場代わりの簡素な寺の床に腰を掛けたストゥ・バン(52)がポツポツと語り出す。
「川の水を飲むと下痢したり、熱が出たりするようになった。こんな大きな川のそばにいて雨水を集めて飲むなんてどうかしている」
ダム建設続々
集落のリーダー、シーク・メコン(52)が「川が変になったのは、上流にダムができた1993年の3年後くらいからだ。水位が大きく変わって洪水が多発するようになった。いつの間にかイルカも見掛けなくなったし、魚や水草の中にはまったく取れなくなったものもある」と畳み掛けるように言う。
首都のプノンペンから車で10時間。彼らが暮らすスレコール村はメコン川の支流セサン川のほとりにある470世帯ほどの小さな村だ。