≪見せてもらった野球の底力≫
スポーツの世界では、こういう奇跡的なドラマがありうる。球界再編のおまけのように、弱小寄せ集め集団としてスタートしたパ・リーグの東北楽天が、球団創設9年目で初優勝を果たした。
東日本大震災で、当時の嶋基宏選手会長が「見せましょう、野球の底力を。見せましょう野球選手の底力を」と宣言してから、2年半の快挙でもある。
存分に、野球の底力を見せてもらった。それは優勝のマウンドで田中将大投手が雄たけびをあげた瞬間の、スタンドの爆発的歓喜に、地元仙台市クリネックススタジアム宮城に集まったパブリックビューイングのファンが飛ばした風船の数に、宮城県南三陸町の仮設商店街に集まった約60人の被災者の喜びように象徴されていた。
田中が優勝を決める最後の打者を三振にとり、投球を受けた嶋はマウンドに駆け寄りながら、もう泣いていた。「いつになったら底力を見せるんだ」の声に、悩んだ夜もあったのだという。
選手らはグラウンドだけで戦ったわけではない。被災地の子供らと交流を続け、募金活動など支援の先頭に立った。今季加入したジョーンズはキャンプ前の1月、被災地を訪ねて「このチームは特別だと思っていた」のだという。