米露外相会談では焦点だったアサド政権が化学兵器の保有状況を報告する時期を、1週間以内とすることで合意した。オバマ政権側は会談初日の(9月)12日から、アサド政権が化学兵器禁止条約に基づき、11月上旬ごろの報告を想定しているとみられることに強く反発。ロシアはこの反発を受け、オバマ政権に足並みをそろえる形でアサド政権に早期の行動を促したことになる。
ロシアがアサド政権に化学兵器の国際管理を受け入れさせようとしているのは、オバマ政権による軍事行動にある程度の現実味があるとみて、アサド政権維持のための対応が必要だと判断したからだ。オバマ政権が想定しているのは地上軍の投入を伴わない限定的な軍事行動だが、それでもアサド政権の弱体化につながる可能性が高い。この場合、反体制派に加わるテロ組織が勢いづきかねず、ロシア国内でのテロ活動が活発化することも懸念されていた。
このためウラジーミル・プーチン大統領(60)は9月12日付の米紙ニューヨーク・タイムズへの寄稿で、国連安全保障理事会決議に基づかず、自衛目的でもない軍事行動は「国際法に違反する」との立場を強調して米国の軍事行動を牽制(けんせい)した。しかしオバマ氏は最後まで軍事行動という選択肢を捨てることはなく、ロシアはアサド政権に譲歩させることで事態の収拾を図ったとみられる。