「映画監督はスポンサーが付かなくなるなど、自然に引退する例がほとんど。『最後のつもりで』と製作に臨む人はいるが、引退を明言する監督は聞いたことがない」
映画評論家の佐藤忠男氏(82)はこう話す。
アニメ評論家の氷川竜介氏(55)も「アニメ監督を含めたクリエイターは生涯現役が基本」とする一方、「スタジオジブリは実質的に宮崎さんの個人工房。仕事に年齢的な限界があったのでは」と推測する。
氷川氏によると、アニメの作画の細部は、監督がスタッフに指示して製作するのが普通だ。だが、宮崎監督は膨大な絵コンテ、原画の核となる部分を自ら手書きし、出来上がった作品の表情一つも自身で直すこだわりを貫いてきた。
映像研究家の叶精二さん(48)は「50代でもありえない奇跡に近い仕事ぶり。いつ引退してもおかしくはないと思っていた」と激務をおもんばかった。