安全保障問題を書いていると、戦史に顔をのぞかせるが、華々しさとは無縁な、それでいて現代戦との縁(えにし)を細々とつなぎ止めてきた兵器・兵装に、思いがいくことがある。陸海空3自衛隊と米海軍・海兵隊などが6月、米カリフォルニア州沖で実施した水陸両用戦合同演習「夜明けの電撃戦」の資料を読んでいる時もそうだった。
揚陸艦の先駆け、日本
陸上戦闘部隊が艦艇・航空機を使い水空域を越えて上陸する水陸両用戦は、陸海空といった軍種を超えた高度な統合作戦を要求される。中国軍艦・公船による日本領海侵犯・異常接近が続発する今、自衛隊が米軍から学ばなくてはならない重大分野だが、3自衛隊による海外での統合実動演習は初めてだった。
水陸両用戦の中核は、港湾設備に頼らず海岸に直接、或(ある)いは航空機・上陸用舟艇を駆使して兵員や兵器、物資を上陸させる揚陸艦。海上自衛隊も輸送揚陸艦やヘリコプター空母を参加させたが、日米両国艦艇の映像を見た際、不思議な感覚を覚えた。大東亜戦争(1941~45年)で島嶼(とうしょ)をめぐり、彼我に分かれて激烈な水陸両用戦を繰り返した両国が、同盟軍として演習に臨んだためだけではない。