トレードとポーカーに共通する「勝つ思考」
ポーカーで重要なのは、相手がどうアクションするかを考え、最も期待値が高くなる行動をすることだ。つまり、自分が勝っていると思われる場合は、相手がよりたくさんのチップを賭けてくれるよう、逆に自分が負けていると思われる場合は、相手が賭ける額をできるだけ抑えて負けを小さくする。もしくはブラフ(勝っていると見せかけること)をして降りてもらうためには、いくらチップを賭けるのが最も期待値が高いかを考える。
投資でいえばどの銘柄をどのタイミングで買うのが、最も良い結果が期待できるのかを考えて売買する。ビジネスであれば商品に対して費用対効果が最大となる広告を打つ。
しかし正しい選択をしたからといって、自分が期待した結果になるとは限らない。ポーカーでいえば、自分が強いハンドで最も適切な額のチップを賭けたとしても、相手が弱い手だったり、弱気だったり、もしかしたらただの気まぐれで、賭けに乗ってこないかもしれない。仮に期待どおり相手が勝負を受け入れたとしても、運を味方につけた相手が逆転で勝つかもしれない。
投資で言えばどんなに会社が魅力的な決算を出したとしても、必ず株価が上昇する保証はない。ビジネスも然り。明らかにライバルよりいい商品で値段が安かったとしても、100%それがヒットするとは限らないのである。
見落としそうなところに情報がある
では、これらの結果は、ただ運に任せるしかないのだろうか。
先程も述べたが、ポーカーで最初に与えられる情報は、自分に配られた2枚のカードのみである。しかし実際には、自分と相手のポジション(座っている位置、プレーの順番に関係する)や持っているチップの量、相手や自分の参加率(どれくらいの割合で、チップを賭けてゲームに参加するか)など、一見見落としそうなところにも、情報はたくさん詰まっている。
投資でいえば、単純なPERやPBRといった数値的な指標だけでなく、例えば決算一つ取っても、前期と同じ数字に見えてセグメントごとの売り上げが大きく変わっていたり、増収だが一過性の要因が大きかったりと、きちんと掘り下げないと見えてこない。ビジネスでも、売りたい商品が安くて高品質だったとしても、商品のデザインや広告で狙うターゲット層、出店するエリアなどをしっかり考える必要があるだろう。
安直に成功した=選択が正しかった、失敗した=選択が間違っていたと判断するのも危険だが、結果から逆算して、反省点や見落しはなかったか考え、次に活かすことが重要である。そしてまた、正しいと思われるものにベットする。
チャンスが来た時に大きく勝負できるかがカギ
これはポーカーに限らず、投資やビジネスにおいて重要なことである。目先の結果にとらわれず、チャンスを最大限生かせるタイミングをひたすら待ち、その時が来たら迷わず勝負ができるよう、地道に自分の武器を磨き続けるしかない。もし賽(さい)の目が悪い方に転がったとしても、それまでの検証や研究は決して無駄にならないし、次のチャンスを待てばいい。ただの結果論で運がよかった悪かったと一喜一憂するだけでは決して得られないものが、得られるのである。
成功者と呼ばれる人たちは、何も特別なことをしているわけではない。愚直で地味な努力を積み重ねて、ひたすらチャンスを待って、来るべきチャンスが来た時に、大きく勝負をした者が、成功を得るのである。日本人は特に謙遜を美徳とする傾向があるゆえ、成功したのはたまたまで、運がよかっただけと言うかもしれない。しかし、この人はたまたま運がよかっただけで、自分は運が悪かったからこの結果なのだと思考停止するのは禁物だ。
普段から目先の結果だけでなく、結果を得るための期待値をいかに上げ、そして期待値が高い(と思われる)場面で、いかに勇気を振り絞って勝負をするか。成功を掴むためにも、そういった思考ができるよう、普段から癖をつけておくのが成功するための近道だろう。
この思考法を鍛えるために、最適なのがポーカーなのだ。ただの「運ゲー」などと思わず、恐ろしく多くの情報が詰まったゲームだと実感しながらプレーしてほしい。楽しいゲームとしての魅力に加え、成功を掴むために役に立つであろうことを、自信をもって伝えたい。
けむ。(けむ)
デイトレーダー
1975年生まれ。早稲田大学理工学部を卒業後、メーカーに就職するも、度重なる残業で体を壊し退社。その後、家庭教師、パチプロなどを経て、現在はデイトレーダー。予備知識ゼロで株取引を始め、チャートすら見ずに板の動きだけを見て株の売買をする「板読みトレード」という手法を生み出す。2016年にトレーダー仲間6人で、アミューズメントカジノ「秋葉原カジノクエスト」をオープンさせた。
(デイトレーダー けむ。)(PRESIDENT Online)