いま経営者や投資家の間で、「テキサスホールデム」というルールのポーカーが人気を集めている。運やハッタリだけではなく、数学的根拠に基づくゲームだということが広く知られるようになったのが一因だ。全世界で1000万人以上の愛好者がおり、日本国内でも手軽に楽しめる「アミューズメントカジノ」のような場が増えつつあるという。『ゼロから勝てるポーカー』を著した投資家のけむ。氏が解説する--。
「継続的に勝ち続ける人」は何が違うのか
優勝賞金10億円以上のプロスポーツ、ポーカー。毎年ラスベガスで開催される世界最大のポーカートーナメントWSOPでは、莫大な優勝賞金を夢見て、世界中から数万人ものポーカープレーヤーが集結する。
参加資格は特になく、誰でも参加費さえ払えば、大会に挑むことができる。今日ポーカーを覚えたばかりの人であっても、世界のトッププレーヤーと同じ土俵で戦うことが可能なのだ。そしてどちらにも等しくチャンスが与えられ、誰でも優勝し、富と名声を得ることができる。
とはいえ、もちろんルールを覚えたばかりの初心者が、運と勘だけを頼りに勝ち続けることは難しいだろう。勝利の可能性を少しでも高めるために、彼らは相手のわずかな動作・表情・プレーから、最大限の情報を得ようとする。日々最新戦術を研究し、0.1%、0.01%でも勝率を高めるための努力を惜しまない。
ところで、初心者と上級者は何が違うのだろうか。刹那的な結果を見ただけでは、どちらが実力者かすら分からないこともあるだろう。しかし長期的に見れば、かならず勝つべくして勝った者、負けるべくして負けた者の差が、明確に表れるのである。
これは、ビジネスや投資の世界でも同じことが言える。瞬間的な運を味方につけ、短期的な成功を収めた例は枚挙に暇がないが、運だけを頼りに継続的に成功を収めている例は稀だろう。
世界で人気が加速するテキサスホールデム
ここでポーカーについて、簡単に解説しておきたい。ここで言うポーカーとは、「テキサスホールデム」と呼ばれ、100種類以上あると言われるポーカーのなか、世界で最も競技人口の多いゲームだ。日本人になじみ深い「ドローポーカー」とは、ルールもゲーム性も大きく異なっている。一般にカジノでポーカーと言えば、このテキサスホールデムのことを指す。
最初各プレーヤーに2枚ずつカードが配られ、それとは別に全員が使える共通カードが場に5枚開かれる。この計7枚から5枚を選んで、役をつくって勝負する。ゲームは4ラウンドで構成され、個人用のカードが2枚配られたとき、共通カードが3枚オープンされたとき、4枚目、5枚目がオープンされたときに、毎回チップを賭け合う。最終的に賭け額が揃ったら、カードを見せて、できた役を発表し、勝敗が決まる。
駆け引きだけでなく「数学的根拠」が存在する
最初に賭けるとき、判断に使える情報は自分に配られた、たった2枚のカードしかない。そこからラウンドが進むごとに、全員が見られる共通カードが増える。盤面の情報量が増えるとともに、それを見て相手がどう賭けたか、前のラウンドと比べて動きは変わったか、いま場に賭けられているチップはいくらで相手はいくら賭けてきたのか、などの情報を総合して考え、勝てるかどうかを見極めていく。
目の前にある限られた情報から、最大限の情報を引き出し、自分が勝つための戦略を決めていく、究極のマインドゲームだ。ただし、「人狼」などの駆け引きが勝利の要素を占めるゲームとは異なり、必ず根底には数学的根拠が存在している。
これはトレードの世界でも全く同じだ。自分の手札(資産や経験値)をもとに、売買状況や材料(株価に影響するようなニュース)といった公開情報を加味して勝負していく。勝つために必要なアプローチや、強者となるための資質は、ポーカーで必要とされるものと一致しているのである。