ロシアと中国、月面基地建設で調印
しかし近年、宇宙開発をめぐる大国間のこうしたバランスシートが大きくシフトしはじめています。
米国は現在、ヒトを月や火星へ送り込むアルテミス計画を推し進めていますが、その一環として、月軌道を周回する宇宙ステーション「ゲートウェイ」の建設が2024年から予定されています。しかし、それに参加予定だったロシアは、「米国の意向が強すぎる」として2020年に当計画から離脱。一方、2021年4月26日には、中露の宇宙開発機関である中国国家航天局とロスコスモスによって、「国際月科学研究ステーション」の共同建設に関する声明(覚書)が発表されたと新華社通信が報じました。この月面基地は、2030年に建設が開始される予定です。
米中においては政経両面で激しい対立が続き、ロシアはクリミア半島(2014年)やウクライナ(2017年)で発生した問題以降、西側諸国から経済制裁を受けています。
米国をしのぐ開発力とノウハウを持つロシアと、急速に力をつけている中国。西側諸国から敬遠されがちな両2大国が宇宙開発においてタッグを組むことにより、一時代前の国際バランスに立ち戻ることを世界が警戒し、憂慮しています。
【中国の宇宙開発の歴史】
※日付はすべてCST(中国時間)、ならびにJST(日本時間)
- ・1970年4月24日
- 中国初の人工衛星「東方紅1号」打ち上げ
- 銭学森が開発した「長征1号」を使用
- ・2003年10月15日
- 中国初の有人宇宙船「神舟5号」打ち上げ
- 旧ソ・米に続いて独自に成功したのは三国目
- ・2008年9月25日
- 「神舟7号」の船長、タク志剛(しこう)が中国人として初めて宇宙遊泳に初成功
- 旧ソ・米に続いて独自に成功したのは三国目
- ・2011年9月29日
- 中国初の宇宙ステーション「天宮1号」打ち上げ
- 旧ソ・米に続いて独自に成功したのは三国目
- 無人の神舟8号、有人の9・10号とのドッキングに成功
- ・2012年6月16日
- 「神舟9号」に搭乗した劉洋(りゅう・よう)が中国人女性として初の宇宙飛行士に
- ・2016年9月15日
- 中国宇宙ステーション「天宮2号」を打ち上げ
- 神舟11号がドッキングし、約1ヵ月間、有人で運用
- ・2018年5月21日
- 中継通信衛星「鵲橋(じゃっきょう)」打ち上げ
- ラグランジュ点L2に投入
- 月の裏側に着陸予定の嫦娥4号の信号を地球に転送するのが主任務
- ・2018年12月8日
- 月探査機「嫦娥4号」打ち上げ史上はじめて月の裏側に着陸
- ランダーには月面ローバー「玉兎2号」を搭載
- ・2020年5月5日
- 新型大型ロケット「長征5号B」と新型有人宇宙船のテスト打ち上げに成功
- 宇宙ステーション建設への使用を目的に開発
- ・2020年7月23日
- 火星探査機「天問1号」打ち上げ
- 翌年2月、中国探査機として火星軌道投入に初成功
- ・2020年9月4日
- 「再使用型宇宙機」の試験飛行に成功と公表
- 小型の無人スペースシャトルと思われる
- ・2020年12月16日
- 「嫦娥5号」が月からのサンプルリターンに成功
- カプセルが地球に帰還
- ・2021年4月29日
- 中国宇宙ステーション「天宮」建設開始
- 翌2022年に完成予定
- ・2021年3月
- 中国とロシア、月面基地建設で覚書に調印
- ・2024年
- 月探査機「嫦娥6号」打ち上げ予定
- ・2030年
- 国際月面研究基地の建設開始予定
【宇宙開発のボラティリティ】は宇宙プロジェクトのニュース、次期スケジュール、歴史のほか、宇宙の基礎知識を解説するコラムです。50年代にはじまる米ソ宇宙開発競争から近年の成果まで、激動の宇宙プロジェクトのポイントをご紹介します。アーカイブはこちら