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実家の不動産相続 3年以内に所有者変更しないと「10万円の罰金」へ (2/2ページ)

高橋成壽
高橋成壽

■期限が決まっている手続き、期限のない手続き

 相続手続きにおいて期限が決まっているものは、(1)相続するかどうかの意思決定、(2)納税期限、となります。

 相続するかどうかの意思決定は、相続開始後3ヶ月以内に行います。何もしなければ単純承認といって、金融資産、不動産、借金など条件をつけずに全財産を相続することになります。故人が会社を経営しているなど、会社の借金の連帯保証人になっている場合は、相続放棄を検討する場合もあります。借金額が明確な場合は、プラスの財産の範囲内で借金も背負う限定承認という方法もあります。昨年来、コロナの影響で遺産分割が円滑に実施できない事態もありますので、3ヶ月を超えても相続放棄や限定承認が認められる可能性もありそうです。

 納税期限は、所得税と相続税の申告と税金の納付が必要です。所得税は準確定申告といって、亡くなってから4ヶ月以内に個人の所得税を申告納税します。相続税は亡くなってから10ヶ月以内に申告納税します。所得税は、生前の収入ですから、公的年金、個人年金、給料、不動産収入、投資収益などがあります。相続税は生前に蓄えたり、代々引き継いできた金融資産と不動産が対象です。財産をどのように分けたかにより、遺族の納税額が変化します。

■罰金10万円を払うケース

 法制審議会の案によると、不動産の名義変更を怠った場合は、10万円以下の過料とあります。期限と罰則が明確になったことで、行政側も躊躇なく過料を課すことができます。罰金の支払いが嫌な人は相続しないという選択と、相続後売却するという選択となります。売却したくても値段がつかなかったり、買い手が存在しない不動産もあります。そのような不動産は、国に引き取ってもらえる可能性があります。更地であることが条件のため、山林等は対象にならないと考えられます。費用としては管理費用の10年分を納付することで所有権を国に移すことが可能です。

■これからの相続の注意点

 不動産の名義変更に罰則が設けられることで、家族がいる人のほとんどが対象になります。筆者自身が以前の相続で、名義変更ができていなかった田舎の土地があり、急遽相続手続きを実施することになりました。数十年前の相続のため途中の相続人もなくなり、孫やひ孫の世代が引き継ぐことになりました。相続人が非常に増えており、まとめることになった相続人の一人は大変だったろうと思います。

 今まで名義変更をしなくても利用には問題ありませんでした。これからは、放ったらかしには罰金があると理解し、速やかに名義変更を実施する必要があります。人によっては相続争いなど時間を浪費している場合ではないこともありえます。あなたの実家を相続する際は、忘れないように手続きを済ませましょう。故人と疎遠な方も要注意と言えるでしょう。

高橋成壽(たかはし・なるひさ)
高橋成壽(たかはし・なるひさ) ファイナンシャルプランナー CFP(R)認定者
寿FPコンサルティング株式会社代表取締役
1978年生まれ。神奈川県出身。慶応義塾大学総合政策学部卒。金融業界での実務経験を経て2007年にFP会社「寿コンサルティング」を設立。顧客は上場企業の経営者からシングルマザーまで幅広い。専門家ネットワークを活用し、お金に困らない仕組みづくりと豊かな人生設計の提供に励む。著書に「ダンナの遺産を子どもに相続させないで」(廣済堂出版)。無料のFP相談を提供する「ライフプランの窓口」では事務局を務める。

【お金で損する人・得する人】は、FPなどお金のプロたちが、将来後悔しないため、制度に“搾取”されないため知っておきたいお金に関わるノウハウをわかりやすく解説する連載コラムです。アーカイブはこちら

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