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実家の不動産相続 3年以内に所有者変更しないと「10万円の罰金」へ (1/2ページ)

高橋成壽
高橋成壽

 法務省の有識者会議である法制審議会(令和3年2月10日開催)において、「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要綱案」が全会一致で可決されました。今後は閣議決定、法案提出、法改正の審議などが予定されます。従来との大きな変更点は、不動産を相続で取得した相続人による所有者の名義変更が義務化されたことです。

 今までは、親が亡くなっても税金さえ支払っていれば、所有者の名義を変更する必要はありませんでした。日本には先祖が所有者のままになっている不動産がたくさんあります。これからは、所有者変更をしなければ罰金が課されることになるのです。自分には関係ない、とは言い切れません。

■一般的な相続手続きの流れ

 相続手続きは、人が亡くなった時点から始まります。

(1)亡くなった人(被相続人)の財産の一覧表(財産目録)を作成

(2)財産的価値を計算し、財産の総額を算出(課税価格の算出)

(3)遺言があれば所定の手順を踏んで遺産分割を実施。以下(4)は割愛する。

(4)誰が何をどれだけ相続するかを遺族が話し合いまとまった結果を書類に残します。(遺産分割協議書の作成)

(5)遺言や遺産分割協議書に従い、財産を引き継ぎます。預金、証券は解約し、不動産については引き継いだ人の名義に書き換えます。(遺産分割の実施)生命保険金は遺産分割前であっても保険金請求することが可能です。

(1)財産目録は故人が生前にまとめて作成しておくと家族の手間が省けますし、抜け漏れの可能性が減るでしょう。故人が遺言を作成したり、エンディングノートを作成している場合は、既に一覧が作成されているでしょう。財産目録がない場合は、通帳を探して銀行口座、証券口座、保険契約などを探し出す必要があります。この目録作成が遺族の最初の手間となります。証券と保険は金融機関から定期的に書類がとどきますので抜け漏れの可能性は低いです。銀行や郵便局は口座の残高をお知らせする機能はありませんので、口座を発見できないこともありえます。

(2)課税価格の算出は、銀行、証券、保険は容易ですが、土地や建物などの不動産、自動車などの動産は評価が難しいかもしれません。計算の仕方は税務署に相談するといいでしょう。相続税がかかることが事前に確認できている場合は、相続税の申告を前提に税理士に計算を依頼するとよいでしょう。注意すべき点は、配偶者が相続財産1.6億円まで相続税が非課税になるなど適用対象の人でも、相続税の申告が必要なことです。相続税の申告手続きを実施することを条件に、相続税を免除するという設定になっていますから、申告をしないと相続税を免れることはできません。

(3)遺言には種類があります。自筆証書遺言の場合は検認が必要ですので、裁判所で検認手続きを実施します。公正証書遺言の場合は、検認不要ですので、相続人間で内容を共有するといいでしょう。

(4)遺産分割協議書の作成が、相続手続きのなかでも難しい工程です。相続する人が0人であれば、故人の財産は国の所有になります。相続する人が1人であれば意見を聞く相手がいませんので、財産はすべて引き継ぐことができます。相続人が2人以上いる場合は、話し合いが必要です。遺産分割の難しい点は、誰かが得をすることで、他の誰かが損をするという構造にあることです。損得を気にしない人だけであれば、スムーズに遺産を分けられるのですが、お金の損得以外に感情面での損得が発生するため、話し合いがまとまらない場合があります。家族で話し合いがまとまらない場合は、専門家に交通整理を依頼するのがいいでしょう。最悪のケースですと争いが始まり、弁護士が間に入って家族間で連絡ができなくなります。

(5)遺産分割の実施は、遺言か遺産分割協議書の通りに行います。金融機関や法務局など、指示に従い、求められた書類を提出すると解約や名義の書き換えが完了します。遺産分割は遺言が最優先となります。遺言があったとしても相続人の全員が承諾すれば、遺産分割協議による財産分けも可能です。相続では遺言なしのケースが多いため、通常は話し合いの実施と遺産分割協議書の作成が必要となります。遺言があっても、遺留分相当を受け取りたい意向の相続人がいる場合は、遺留分侵害額請求という手続きで遺留分相当額を相続することも可能です。

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