IT風土記

熊本発 プロジェクションマッピングやVRを観光や教育に活用 (2/2ページ)

 ジオラマは直径約3メートル。国土交通省の地形図や航空写真などを参考に精密に再現した。実際の中岳火口の直径は約600メートルあるが、リアルに再現されたジオラマは、上空から火口を見下ろしているようだ。

 「阿蘇山上に来ても、天候が悪かったり、火山ガスが噴出したりして中岳火口の見学ができないケースが多い。そんな時でも見学したときと同じような体験ができる展示物を作ろうと考えていた」と、阿蘇火山博物館学術専門委員長で、新たな展示物の選定にあたった展示物刷新委員会の矢加部和幸委員長は語る。

 「高精細で映像がきれい。また、ジオラマに立体的に映し出すようにしたことで臨場感が増してきた」と矢加部委員長。プロジェクションマッピングの映像については今後、さらに磨きをかける予定で、火山の成り立ちを紹介する映像などの製作が検討されている。

 県や阿蘇火山博物館がコンテンツの制作に力を入れるのは、阿蘇観光に新たな魅力をつくるためだ。

 阿蘇観光の大きな目玉は、火口の目前まで見学できる阿蘇中岳観光だが、昨年4月以降、中岳の火山活動が活発になり、火口周辺1キロ以内の立ち入りが厳しく制限されている。規制が解除されても火口付近のガスの状況や天候によっては立ち入れないことが多く、せっかく阿蘇山上に観光に訪れても、何も見ずに終わることもある。だが、博物館に立ち寄って、プロジェクションマッピングの映像を見てもらえば、疑似的ではあるものの火口見学の醍醐味を味わうことはできる。

 2016年に発生した熊本地震や中岳噴火の影響で阿蘇観光は大きく落ち込んでいる。震災前の阿蘇地域の延べ宿泊客数は200万人近くにのぼっていたが、噴火翌年には3割近くも減少。2018年も154万人にとどまっている。県としても「阿蘇観光の回復に寄与したい」(松岡主幹)とVR映像の作成に力を入れているのだ。

 博物館の企画・教育などを担当する阿蘇火山博物館の豊村克則学芸員によると、「水源を巡るVRのコンテンツは、見た方の評判がよく、『ここに行きたい』と尋ねられることが多く、ここから水源に向かう観光客も増えています。阿蘇全体の滞在時間を増やすいい効果が出ています」としており、効果は表れ始めている。

 そして、VRコンテンツの充実化やプロジェクションマッピングの展示で、阿蘇火山博物館が特に期待を寄せているのが教育への活用だ。

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