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ミシュランの星を失い提訴や自殺 振り回されるシェフの苦悩はいまや社会問題 (2/2ページ)

 公表される審査基準は、(1)素材の質(2)調理技術の高さ(3)独創性(4)価値に見合う価格(5)料理全体の一貫性-の5つ。三つ星は「それを味わうために旅行する価値がある卓越した料理」に与えられる。三つ星店には3度、秘密調査員が訪れるといわれるが、真相は謎のまま。かつて、元調査員が「実は毎年、訪問調査をしているわけではない」と書いた暴露本を出版し、ミシュランと訴訟合戦になったこともある。

 三つ星が、だれにとっても「最高の店」とはかぎらない。

 三つ星発表とともに、外国から予約が殺到。フランスの一流店なのに、店内で聞こえるのは英語ばかりということも珍しくない。ある有名店を訪れたとき、中国人の若いグループがひと皿ごとに写真を撮り、「デザートは不要」と言ってさっさと帰ったのを目撃した。

 パリの有名店なら、コースで1人4万円はザラ。ワインを頼めば、2人であっという間に10万円だ。折からの和食ブームで、「焼きナスの付け合わせ」「和風だしのジュレ」「イチゴのワサビ添え」など「独創的」な料理が出てくると、日本人客は「大枚はたいて高級フレンチを食べにきたのに…」と少々がっかりするかもしれない。

 89年には60万部を売り上げた仏版ミシュランガイドも、最近は5~6万部。インターネットの飲食店評価に押されたうえ、「世界のベストレストラン50」などライバルも続々出現した。

 それでも、ミシュラン神話は衰えない。名店を探すとなると、正体不明のネット調査より、伝統が支える格付けに信頼感で軍配が上がる。

 新年に星付き店をのぞいてみた。白いクロスの食卓に案内されるときの高揚感。宝石のように美しいアミューズ、黒トリュフを惜しげもなくふりかけたブレス産鶏-夢見心地の空間は、まさにフランス料理の殿堂ならでは。昨年来交通ストが続くパリで、仕入れからサービス係の通勤まで苦労しているはずだが、そんな裏側はみじんも感じさせない。

 ミシュランと闘うベイラ氏の店は昨年、7%客足が増えたとか。これも星の伝説がなせる業だろう。今年の仏版番付は1月27日に発表される。(パリ支局 三井美奈)

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