地元に恩恵も
大型施設の登場は、地元の経済や産業にどういう影響をもたらしたのか。
観光客は09年の約970万人から17年の約1740万人へほぼ倍増。必ずしも海外へお金が流れるわけでもない。サンズは地元企業から年間500憶円以上の物資を調達し、地元調達率は92%だという。
その中でお菓子工場を訪れた。1995年に開業した「モントルー・パティシエ」。IR進出前は10人程度だったが、今や100人以上の従業員を抱える。
甘い香りが漂う建物で、ケーキやパンなどをつくる職人らが手際よく工程をこなす。リー・チシュン専務(42)は「IRは私たちにとってとても重要なビジネス」と強調。IR開業前の2010年の売り上げは約350万シンガポールドル(約2億8000万円)だったが、昨年は約1300万シンガポールドルに達したという。
もう1社は、窓ガラスの製造・管理業者の「ダイアモンド・グラス」。開業時の06年には2人しかいなかったが、現在は約200人を雇用し、2つの工場が稼働。サンズのIR建設に携わったというケーシー社長(40)は「小さい企業がみんな大きくなっている。IRのおかげで地域の雇用を生み、利益を生んだ」と自信を見せた。((下)は明日12月17日に掲載します)
IRをめぐる動き カジノを含む統合型リゾート施設(IR)は、認定申請が令和3年1月4日から始まる。立地区域は最大3カ所で、横浜市、大阪府・市、和歌山県、長崎県の4地域が誘致を表明。東京のほか、北海道、千葉市、名古屋市の4地域も申請予定か検討中としている。誘致を希望する自治体は、公募で選んだ事業者と共同で整備計画を国へ提出する。