ヘルスケア

相次ぎ薬に頼らない、製薬会社が力を入れる「ビヨンド・ザ・ピル」 (2/3ページ)

 デジタル技術を活用した新しいヘルスケア事業への参入について塩野義の手代木功社長は「どのくらいのタイミングで収益につながるかわからないが、今、手をつけておかなければ、乗り遅れたら、大変なことになるだろう」と話す。

 5月に入ってからは人工知能(AI)を使ったインフルエンザ診断機器を開発中の国内ベンチャー企業に12億円出資したことも発表。「このほかにも見ている技術はある」と明かす。

 国内製薬大手で、最も早く保険適用を目指した治療用アプリ事業への参入を表明したのは田辺三菱製薬だ。現在、神経系疾患分野などで模索中だが、まずは今年に入って糖尿病患者の生活習慣改善を図るアプリを発表した。利用者が食習慣など生活の記録をつけると、蓄積している重症化した糖尿病患者のデータなどと比較し、助言が導き出される。田辺三菱では将来的に企業の健保組合や自治体に販売する事業に育て、新しい収益源にしたい考えだ。

 医薬品に頼らないビヨンド・ザ・ピルという考えが製薬業界に広まる背景には製薬業界独特の産業構造が影響している。

 新薬開発には10年以上の年月と1千億円規模の研究コストがかかるとされるが、特許が切れれば後発薬に切り替わり収益は激減する。その中でアプリなどデジタル技術を用いた新領域は単独で収益事業になるだけでなく、既存薬と併用することもでき、薬の販路拡大にもつながると期待されている。

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