製薬企業が従来の医薬品ビジネスの枠を超え、デジタルヘルスケア事業に相次いで乗り出している。キーワードは「ビヨンド・ザ・ピル(医薬品を超えて)」。デジタル技術を用いた服薬管理や症状解析などの技術開発が進み、ゲームで治療を行うアプリも登場した。高騰する製造コストや創薬の低い成功確率、特許切れ後の収益減など、製薬企業を取り巻く外部環境が厳しくなる中、新分野での開拓に力を入れている。
スマートフォンやタブレット端末を傾けキャラクターを動かし、ときには同時に画面に反応してタップしてゲームを進めていく…。
塩野義製薬は3月、米アキリ・インタラクティブ社が開発中の発達障害の一種、注意欠陥・多動性障害(ADHD)を対象にした小児用のデジタル治療用アプリの日本での独占開発・販売権を得たと発表した。販売額などに応じて、1億ドル(110億円)以上を支払う。アプリは子供がゲームに没入することで、ADHDにおいて機能障害に陥るとされる脳の前頭前野を刺激、活性化させる仕組みだ。
米国では8歳から12歳の小児患者を対象にした治験(臨床試験)が行われ、注意力の改善などの結果を得た。すでに米国では治療薬としてFDA(米食品医薬品局)に承認申請が行われており、塩野義も今年中に国内で治験を始め、保険適用される医療機器としての申請を目指す。