一円玉は消えてしまうか…電子マネーに押され出番激減 (2/2ページ)

1円玉=15日(酒巻俊介撮影)
1円玉=15日(酒巻俊介撮影)【拡大】

電子マネーが“後押し”

 流通量が減った最大の要因は電子マネーの普及だ。電子マネーはコンビニエンスストアやスーパー、駅の売店などでの利用が進んでおり、財布から小銭を取り出す機会はめっきり少なくなった。

 日銀によると、電子マネーの決済額は29年には5兆円超に達しており、統計を取り始めた20年の約7倍になっている。経済産業省は現状2割程度のキャッシュレス決済比率を、39(2027)年には4割にまで高める目標を掲げており、流通量の減少傾向は止まりそうにない。

消費税が製造量に影響

 出番が激減する一円硬貨が脚光を浴びたのは、平成元年に3%の消費税が導入されたときだ。政府は釣り銭用の需要増を見込んで、製造量を23億枚超へと前年に比べ、ほぼ倍増させた。

 ところが、9年に消費税が5%に引き上げられると需要は低迷し、23~25年は収集家向けの記念硬貨セット用を除いて、流通用の製造を中止。消費税が8%へ引き上げられた26年、4年ぶりに製造が再開されたものの、需要は予想よりも伸びず、28年以降は再び製造を取りやめている。

 来年10月に消費税が10%に引き上げられれば、100円の商品にかかる消費税額が10円となることから、需要はさらに減る見通しだ。

 一円硬貨に未来はあるのか。公共経済政策に詳しい一橋大経済研究所の北村行伸教授は「電子マネーに押され、今後も使う機会はどんどんと減るが、現在流通している最も小さな額の硬貨。現金での取引が続く限り、なくなるとは考えづらい」と話している。

 ■一円硬貨 日本政府が発行する貨幣で、額面が1円の硬貨。現在の一円硬貨は昭和30年に発行され、大半が、大阪市北区の独立行政法人造幣局で製造されている。サイズは直径が20ミリ、厚さ約1・5ミリで、重さが1グラム。材質は純アルミニウムで、表面に公募で選ばれた「若木」のデザインがあしらわれている。