維持できれば実は良いほう…転職先、「年収」で選ぶと大失敗するワケ (3/6ページ)

 厚生労働省の発表でも有効求人倍率が高い職業は、建設躯体工事10.47、保安(警備員など)8.29、家庭生活支援サービス(訪問介護員、保育士など)7.39と肉体を使う仕事。人手不足の職種は長く働けるという利点もある。ただ、問題はこれらが希望する仕事とマッチしているかどうかだ。今まで日本の中産階級の多くを占めていたホワイトカラー事務職の求人は0.41と低い。

 毎年、正社員だけで200万人と言われる転職人口(パートなどを含めると500万人)。実際転職した際の動機、退職の理由を年代別に見てみると(図3)、30代は賃金への不満だが、40~50代になると早期退職勧奨の割合が高くなる。人員削減のターゲットになるのはいわゆる団塊ジュニア世代。71~74年生まれ、つまり現在44~47歳は第二次ベビーブームで、毎年200万人を超える大所帯。ポストは少なく社内の競争に敗れれば、会社での居心地も悪く将来も不安。いっそ新天地を求めて転職という選択も自然な流れだろう。

 しかし、転職は決して甘くない。転職した人の満足度を見ると(図4)、どの世代も半数以上が満足と答えているが「30代と50代の転職満足度は全く異質です」と黒田さんは分析する。

 「50代ですと最初は年収1000万円の維持を希望していたけれど、50社も60社も落ち、希望額を大幅に下げて年収300万円でも仕事にありつけただけよかったと満足している人の割合も高いのです。有効求人倍率がバブル期超えといっても平均値には意味はありません。人手が足りない職種もあれば、余っている職種もある。わかるのは人手不足という全体の傾向だけです」

 転職後の年収の増減を見ても(図5)転職初年度に年収が上がるのは30代まで。40代からは年収を維持するのは困難という数字がうかがえる。

人手の奪い合いvs仕事の奪い合い