日本科学未来館の展示「未来のドラッグストア」。アレルギー性鼻炎や胃腸薬でも、個々の遺伝子の型に合わせた薬が登場することを予測している=東京都江東区(吉沢良太撮影)【拡大】
「この女性には家族性疾患を疑わせる遺伝子異常が検出されている。遺伝相談外来への紹介を検討してはどうか」
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ただ、この検査には課題もある。最大の課題は、現時点では遺伝子検査を経て、実際に薬を使える人が10%程度にとどまること。検査では約半数にがんと関連する遺伝子変異が見つかるが、まだ薬がなかったり、効果の期待できそうな新薬の「治験」が終了していたり、患者の状態が治験に合わなかったりするためだ。
もう一つの課題は、検査の過程で思いがけず家族性の遺伝子変異が見つかるケースがあること。未発症の親子や兄弟姉妹に影響するため、遺伝診療に携わる医師や遺伝カウンセラーらとの連携も必要だ。
中釜理事長は「薬に結びつく割合は10%のままではない。使える薬が増えれば割合も高まる。そのためにもわれわれ中核拠点病院が、真剣に開発研究を進めなければならない。25%くらいに持っていければ、だいぶ景色は違って見える。ここ1年は正念場。4、5年で、そこまで持っていければと思う」と話す。
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がん細胞の遺伝子変異を網羅的に解析し、患者に最適な薬を選ぶ「がんゲノム医療」。「治療法がない」と言われた人に薬を見つけたり、より効果の高い抗がん剤を選んだりできると期待される。がん治療はどう変わるのかリポートする。(佐藤好美)