【IT風土記】兵庫発 予防接種のミスをなくせ 丹波市が判定システム、ICT活用して市民の接種履歴を管理 (2/3ページ)

 厚生労働省の調べによると、2016年度に予防接種で起きたミスは6602件にも上る。2013年度に報告制度が始まってから、その数は増加傾向にある。報告されたミスの半数以上は「接種間隔の間違い」だ。システム開発は、丹波市だけの問題ではなく全国の市町村が抱える課題を克服するためのチャレンジでもあった。

 市と医療機関をネットワーク化

 約6000万円の国の補助金を活用し、およそ1年がかりで開発したシステムでは、丹波市と予防接種を行う市内38の医療機関をネットワークで結び、専用サーバーで市民の接種履歴を管理。接種対象者のワクチンの種類や接種日などの蓄積されたデータをもとに自動的に接種の可否を判定する。

 医療機関側には専用のタブレット端末を設置する一方、予防接種の対象となる乳児から中学3年生(4月1日時点)まで約9000人と肺炎球菌ワクチンの対象者となる高齢者約5000人、インフルエンザワクチン対象の高齢者約1万5000人の約3万人に専用のICカードを配布。医師は接種対象者が持ってきたICカードをタブレット端末に読み込ませるだけで接種が可能かどうかを確認できるようになった。

 市内でもトップクラスの接種実績がある高見医院の高見啓央院長は、システム開発にあたってもさまざまな助言を行ったが、「驚くのは、年齢をまたいで予防接種をするときに起きる微妙な接種ルールも読み取って適正な接種量を指示してくれる。よくここまで網羅できたと感心している」と完成度の高さを評価している。

システムの完成度を高く評価する高見医院の高見啓央院長

システムの完成度を高く評価する高見医院の高見啓央院長

 次回の接種の日程を乳幼児の保護者に予防接種の専用サイトを通じてメールで知らせてくれる機能もある。専用サイトの登録率は導入から半年の4~9月で、1歳未満の乳児を育てる保護者で93%、1~2歳児の保護者で76%と高く、接種実績は6~8%も向上。接種漏れを防ぐ効果を上げている。

予防接種をする高見医院の高見啓央院長

予防接種をする高見医院の高見啓央院長

開発のカギとなった“三方一両得”