【IT風土記】香川発 AI農業で熟練農家の“匠の技”を学ぶ 多度津町のオリーブ栽培 (1/3ページ)

 ICT(情報通信技術)を活用して熟練農家が持つ技術を新規就農者に伝授するAI(アグリ・インフォサイエンス)農業が広がりをみせている。栽培のコツやノウハウを動画や画像を交え、分かりやすく解説するコンテンツを作成。見えにくい熟練の技を「見える化」し、早期に技術を習得してもらう取り組みだ。香川県では、日本一の生産量を誇るオリーブ栽培に新たに取り組む農家向けに栽培技術の学習支援システムの開発を進め、多度津町で実用性を検証している。

 香川県は国産オリーブ発祥の地だ。1908年(明治41年)、米国から輸入されたオリーブの苗木は三重、鹿児島、香川の3県で試験栽培が行われたが、順調に育ったのは香川・小豆島の苗木だけ。以来、小豆島を中心に香川県は日本一のオリーブ産地となっている。特に90年代後半ごろからオリーブの健康効果が注目されると、需要が大きく広がり、香川県は栽培面積の拡大に取り組んでいる。県中部にある多度津町でも2011年以降、50軒の農家が新たにオリーブの栽培を始めている。

たわわに実ったオリーブの実。香川県は生産拡大に取り組んでいる(小豆島町)

たわわに実ったオリーブの実。香川県は生産拡大に取り組んでいる(小豆島町)

 「多度津町はもともとブドウの栽培が盛んだったが、高齢化と後継者不足を背景に栽培に手間がかかるブドウ栽培をやめる農家が増え、耕作放棄地も目立ってきた。一方で、オリーブは手入れが楽で、高齢になっても続けられる農業の一つ。耕作放棄地を解消する目的もあり、多度津町での栽培を働き掛けた」と香川県農政水産部農業生産流通課果樹・オリーブグループの森末文徳課長補佐は語る。

香川県生産流通課の森末文徳課長補佐(高松市)

香川県生産流通課の森末文徳課長補佐(高松市)

農作業の合間にタブレットを開いて勉強