「古臭い昭和の遺物」「おじさんたちの憩いの場」「料金システムがわからない」と、若い世代の足は遠ざかるばかりのスナック。しかし、今も飲み屋街を歩けば、スナックの看板はいくつも光り輝いている。なぜ、スナックはなくならないのだろうか--。一人の若きママの話から見えてきた、経営学としての「スナック入門」。
大森の飲み屋街の片隅で
「オープンして半年くらいたった頃かな。酔ってお客さまと2人だったのに寝てしまって、目が覚めたら、そのお客さまが火にかけたお通しの鍋を混ぜてくれていたことがありました」
開業当時の失敗談を、カウンター越しの彼女は懐かしそうに思い浮かべる。場所は東京都大田区の大森駅。「地獄谷」「長屋横丁」などで知られる昔ながらの酔いどれの街。その一角にある「スナックAmi」の亜美ママだ。彼女は2011年、21歳の時に同店をオープンさせた。
21歳でスナックをオープン……。子を持つ親ならば、その行為をどう受け止めるだろうか。「スナックなんてやめなさい」と言うだろうか。ちなみに、アベノミクスでは起業支援という形で国が民間でのスタートアップを促したが、リスクが怖いのか、思うように数字は伸びていない。そのような状況がある一方で、スナックの開業であろうとも支援もなしに自分の力で何かを始めた彼女の存在は、“酔っぱらい”の目からは興味深く見えた。さらに亜美ママのお母さまが店を手伝い、娘を支えているのも不思議な光景だ。