日本での根強い「マイホーム信仰」。「家賃を払うのはもったいない」といって、結婚や出産を機に住宅ローンを借りる人が多い。人気なのは高額なタワーマンションだ。しかし日本の人口はすでに減り始めている。建物にしか価値がない「タワマン」を買って、本当に大丈夫なのか。不動産市場のプロである牧野知弘氏の著書『マイホーム価値革命』(NHK出版新書)から、ある30代夫婦のエピソードを紹介しよう--。
「6500万円を借りて購入したい」
先日、ある30代の夫婦から住宅購入の相談を受けました。
Dさん夫婦は都心の一流上場企業で共働き世帯、保育園に通う4歳と1歳の女の子の子どもがいます。2人の年収を合わせると1000万円を超える共働き世帯ですから、どこから見てもリッチなご家庭です。今、彼らが住んでいるのは、交通の便が良い家賃15万円の都心の賃貸マンションで、広さは55平方メートルと4人家族にはやや手狭になりました。
そんなDさん夫婦が、子どもが増えて賃貸マンションでは狭くなってきたので、東京湾岸部のタワーマンション(タワマン)を購入したいというご相談でした。その1室の価格は7500万円ほど。資金計画をたずねると、こつこつ貯めてきた貯金が夫婦あわせて1000万円強あり、これに住宅ローンで6500万円を借りて購入したいとの計画でした。
彼らは「ゆとり世代」に近い年齢です。
完成予定は「今から2年後」
親に大切にされ、何一つ不自由のない子ども時代を過ごし、就職は多少厳しかったものの無事に社会人になった人が多い世代です。小さいころからゲームに親しみ、ネットやスマートフォンを使いこなすのも自由自在、でも「働きすぎ」は大嫌い。昔のように人生で大きな冒険をしたいといった野望はなく、会社では真面目に勤めるものの、その割にはたいして「出世したい」という願望は持ち合わせていません。