まだインターネットのない時代。私は、書店で腰痛関連の本を立ち読みした。軟骨が出っ張って神経を圧迫しているのなら、治すのは手術しかないではないか。手術なんて絶対にいやだ。とにかくこれ以上悪化させてはならない。その日から、私の頭の中は「腰のこと」で占拠された。
目が覚めて、最初に思うのは「腰」のこと。朝はいきなり起き上がってはいけない。一度横を向いて、手をついてから起き上がること。それが腰への負担を減らす方法だ。顔を洗う時、モノを拾う時、靴をはく時、姿勢に気をつけ、布団のかたさに気をつけ、腹筋、背筋、腰にいいイス、カバンを持つときは左右均等に、それから、それから……。
そのうち、おしりだけではなく、本当に腰が痛くなってきた。私はなんとか自分の腰下肢痛を治そうと、よいと勧められる治療法を片っ端から試した。整形外科だけでも数か所、鍼灸、整体、接骨院、気功……。もがけばもがくほど溺れるように、私の腰下肢痛は悪化し、会社は退職、3度の入院、最後には手術もした。でも……治らなかった。やれることは全部やったのに。
私の腰痛を改善させた「大恋愛」
これだけやって治らないのだから、私の腰下肢痛はもう一生治らないに違いない。最初に痛みを感じてから2年の月日が経ち、私は26歳になっていた。私は布団をかぶって泣くことくらいしかできなかった。しかし、人は一旦ドン底に落ちるとあとは上がるしかないのだ。まだ20代、恋愛も結婚も仕事もしたい。やっぱりいやだ。このまま治らないなんていやだ。こんな風に布団の中で泣いていてはダメだ。まずは外に出よう。なにか行動を起こそう。