ただ、元夫とは音信不通。のちに(離婚後)、夫の事業が悪化し債務に追われていたことが判明した。金策に奔走した元夫は体調を崩し、とうとう支払いが不能になってしまったらしい。
そんなある日、裁判所からSさんの元に「不動産仮処分命令申立書」が届いた。
仮処分命令とは債権者からの申立てにより、裁判所が決定する暫定的処置。裁判で争っている間に、訴えた相手が不動産を処分されないように「仮に処分」しておくという登記のことで金銭債権以外の権利を保全する点で仮差押と異なる。
しかし、いずれにしても不動産を処分されてしまう知らせには違いない。よくよく調べてみると元夫が事業資金で借りた債務の返済が不能となり、その後、債権回収会社に債権譲渡がされていたのだ。
さらに、なんとSさんが離婚の際に受けた贈与が財産を不当に隠したとして、詐害行為取消権(債権者が債務者の法律行為を一定の 要件の下に取消してしまうことができる権利)の訴えを受け、不動産に仮処分登記がされてしまったのだ。
いわれなき財産隠しの汚名をいかに晴らすか?
結婚生活を送っていたときも経営に関与していなかったSさんにとって、元夫が詐害行為を疑われるなど寝耳に水。元夫の事業が厳しい状況だということも、そのときに初めて知った。どうやら、贈与を受ける前から元夫の返済は遅れがちだったようで、債権者からするとあきらかに財産隠し、偽装離婚とみなされたのだった(*話の文脈から推測すると、元夫は確信犯的に財産隠しをしていた可能性が高いのではないか思われる)。