慰問雑誌の最大の特徴は人気絶頂の原節子、李香蘭、高峰秀子ら女優、歌手、ダンサーなど当時のアイドルが流行のスーツ、セーラー服、まさかの水着姿で蠱惑(こわく)的な笑顔とともに大挙して登場していることである。私が本書を書くきっかけになったのも、『戰線文庫』を発行した日本出版社(戦前の興亜日本社)で見た、誌面を彩る彼女たちの魅力に満ちたグラビアの衝撃が出発点である。取材の過程で、元祖アイドル、元「ムーラン・ルージュ」の明日待子さん(96歳)と、美人女優・月丘夢路さん(94歳)にお話を伺うという幸運に恵まれた。お二人の口から、戦火を逃れて行った芸能慰問や困難を伴った映画撮影の様子が生々しく語られた。既存の歴史書には触れられていない、もう一つの戦争の真実を多くの方に知っていただきたい、私の思いはその一点である。(2376円/旬報社)
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【プロフィル】押田信子
おしだ・のぶこ 出版社勤務を経て、フリー編集者として活動。横浜市立大学大学院共同研究員、昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員。2008年上智大学大学院文学研究科修士課程修了、2014年横浜市立大学大学院都市社会文化研究科博士課程単位取得満期退学。メディア史、歴史社会学。共著に『東アジアのクリエイティヴ産業』(森話社)。