【著者は語る】メディア史研究者・押田信子さん (1/2ページ)

2016.7.23 05:00


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 □「兵士のアイドル 幻の慰問雑誌に見るもうひとつの戦争」

 ■歴史に埋もれた“真実”を知ってほしい

 もう間もなく、暑い夏とともに、8月15日の終戦記念日を迎える。女優の故・高峰秀子さんは名著『わたしの渡世日記』の中で、天皇の玉音放送を慰問先の洲崎航空隊で聞いたとし、飛行場に設置されたラジオの前で特攻隊員たちが頭上を太陽に照らされ、バタバタと倒れていった様を描写している。彼らの仲間の多くは、空に海に散り、その軍服のポケットには高峰さんらかわいいアイドルのブロマイドが潜んでいたという…。

 日中戦争下、戦地にいる日本軍兵士の慰撫、戦意高揚を目的に海軍省『戰線文庫』(1938年9月)、陸軍省『陣中倶楽部』(1939年5月)という、大衆娯楽雑誌の形態をとった慰問雑誌2誌が終戦間際まで発行された。だが、戦後、両誌は国会図書館にも所蔵されず、版元の出版社でのみ合本で保存され、長い歳月、存在すら知られることがなかった。本書は歴史の稀有(けう)な語り部である、これらの慰問雑誌の創刊号から終刊までの誌面を分析し、アイドルを代表とする銃後の人々の戦争動員の実態、言説を紹介したものである。

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