難治性鬱病に苦しんできた患者にとってTMS治療は願ってもない話だが、欧米に比べて最先端の医療機器の承認に時間を要するいわゆる「デバイスラグ」のため、日本ではまだ認可されていない。そのため保険が適用されず高額な治療費がかかる。1回6万円の治療を30回受ける必要があり、TMS治療だけで180万円となる。
記者は治療に同意し診察室へ向かった。治療費の多寡については個人の判断になるが、患者の一人として日本でも保険が適用されることを願う。新宿メンタルクリニックはTMS治療に使う医療機器を国内最大となる63台を保有。1台ずつ個室が割り当てられており、リラックスできそうだ。
歯科にある診察台のようにモニターやアームの付いた大型のリクライニングシートに座る。シートが倒れていき、やや上方に視線を向けた状態となる。サイドパットで頭部右側を固定したうえで、磁気を発生し頭蓋骨を通過して脳に直接刺激を与えるコイルを頭部左側に当てられた。
タッ。脳神経に磁気刺激を1回与える。医師、機器を取り扱うトリーターの視線は記者の右手の中指に集まっている。刺激に反応しピクっと動く指を見て、強度、部位、コイルを当てる角度などを見極めるそうだ。数回の磁気刺激でポイントが判明したようだ。
医師の説明が始まる。「1分間に50回の刺激を加えます。4秒間刺激したあとに26秒間を空けて再び始まります。これが37分間続けられます。最初は痛みがありますが、慣れていきますので安心してください」。タタタタタタタタタタタタタッ…。記者の目から火が出た(はずだ)。